こんにちは。
せたがや歯科室 歯科医師の松本です。
「奥歯が1本抜けただけだから大丈夫」と思っていませんか?
実は、奥歯(臼歯)はお口の中で非常に重要な役割を担っており、1本でも失ったままにしておくと、歯並びや噛み合わせが大きく崩れてしまう可能性があります。
今回は、奥歯が抜けたことで起こる変化やその影響、そして適切な治療法についてご紹介します。
奥歯の大切な役割
奥歯(第一・第二大臼歯、親知らずを含むこともあります)は、次のような役割を担っています。
- しっかり噛めるようにする(咀嚼機能)
食べ物を細かくすり潰すことで飲み込みやすくし、消化を助けます。 - 上下の歯のバランスを保つ(咬合支持)
奥歯が支えることで、全体の噛み合わせや咬み合ったときの高さ(咬合高径)を保っています。 - 歯並びを安定させる
奥歯があることで、前歯も含めた全体の歯列が整い、ズレにくくなります。 - 顎関節の位置を安定させる
正しい噛み合わせは、顎の関節の負担を減らし良い影響を与えます。
奥歯が抜けたまま放置すると起こる変化
- 隣の歯が傾いてしまう
歯は隣り合う歯と支え合っています。奥歯が1本抜けると、その両隣の歯が空いたスペースに倒れ込むように傾いてしまうことがあります。歯並びが乱れるだけでなく、噛み合わせにも悪影響を及ぼします。
- 噛み合う相手の歯が伸びてくる(挺出)
抜けた歯の向かい側の歯(対合歯)は、噛み合う相手がいなくなるため、徐々に下がってきます(挺出)。これが進むと、歯の根元が露出してしまい、虫歯や歯周病、歯を失うリスクも高くなります。
- 噛み合わせの高さが変わる
奥歯の支えがなくなると、噛んだときの高さが低くなりやすく、顔の下半分が縮んで見えるようになります。こうした変化は見た目にも影響を及ぼし、いわゆる「老け顔」の原因になることもあります。
- 前歯に過剰な負担がかかる
奥歯でしっかり噛めなくなると、自然と前歯で噛むようになります。しかし、本来、前歯は「切る」役割の歯ですので、無理な力が加わると欠けたり折れたりするリスクが高くなります。
- 噛み合わせが崩れていく(咬合崩壊)
歯の傾きや挺出が進行すると、全体の噛み合わせのバランスが取れなくなり、次第にほかの歯にも負担がかかります。結果として複数の歯がぐらついたり、抜けたりしてしまう「咬合崩壊」に至る可能性があります。
放置することで起こるタイムラインの一例
経過時間 | 主な変化 |
数週間~数ヶ月 | 噛みにくさ、隣の歯が傾き始める |
半年~1年 | 噛み合う歯が伸びてくる、噛み合わせのズレ |
数年 | 噛み合わせが崩れ、顎関節の不調や顔貌の変化 |
早めの対処が重要です
奥歯を失った場合には、なるべく早めに以下のような治療を検討しましょう。
方法 | 特徴・メリット |
ブリッジ | 隣の歯を使って人工の歯を橋のように固定します。違和感が少なく自然に噛めます。 |
インプラント | 顎の骨に人工歯根を埋め込み、見た目・機能ともに天然歯に近い治療法です。 |
部分入れ歯 | 取り外し可能で比較的コストも抑えられます。慣れるまでは少し違和感があるかもしれません。 |
それぞれの治療法には向き不向きがありますので、口腔内の状態やご希望に応じてご提案させていただきます。
最後に:たった1本の奥歯でも、油断は禁物です
歯は「1本くらいなら大丈夫」と軽く思われがちですが、特に、奥歯は噛み合わせや歯並びを支える“要”です。1本抜けただけでも、ドミノのように他の歯に次々と影響が及ぶこともあります。
当院では、抜けた歯に対して患者さまのライフスタイルやお口の状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。奥歯を失ったままになっている方、現在治療を迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。
せたがや歯科室 歯科医師 松本
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