【症例】歯の周りの溶けた骨を歯周再生療法で治療
治療内容
期間
治療回数
費用
治療前の状態・主訴
患者さんは、右下の奥歯が腫れて痛むということで来院されました。
他の歯科医院で、「骨が溶けているけれども、経過観察をしていきましょう」と言われたそうですが、不安になり、来院されました。
治療詳細
歯の周りの骨がなくなる原因は大きく分けると2つあります。
1つは歯周病菌による感染症です。歯周病菌は常在菌で、成人では誰もが口内に持っています。
しかしながら、歯ブラシがうまく当たっておらず、食べかすが残ったままになっていたり、歯科医院にずっと行かなかったりすると、餌がたくさんある環境で菌が増殖し、歯茎の下の骨にまで影響を及ぼしてきます。
菌が増えていくと、最終的に歯の周りの骨が下がり、歯が植わっている部分が少なくなり、歯が揺れてきます。もちろん、1本の歯に限局して起こることもありますが、多くの場合では、全体的に骨が下がっていってしまいます。
では今回のケースはどうでしょう。レントゲンの写真を見ると、歯の一部分だけ斜めに減っているのがわかります。
これは歯周病菌の影響なのでしょうか。患者さんに伺うと、定期的に歯科医院にてクリーニングは受けていたとのことでした。では、一体なぜこのように一部分だけ骨が溶けてしまったのでしょうか。
先ほど、骨が溶けるには大きく分けると2つの原因があるとお話ししました。
もう1つの原因は噛み合わせです。人間の噛み合わせはひとりとして同じものはなく、複雑を極めます。歯は一定の位置にとどまらず、多少動きがあり、噛み合わせは常に変化していきます。
今回、患者さんには意識的に歯ぎしりをしていただいて、その力を調べると、通常よりも大きな力がかかっていました。つまり、実は歯ぎしりの力で歯の周りの骨が溶けてしまっていたのでした。
特に、寝ているときの歯ぎしりや食いしばりは無意識に行っている場合が多いです。患者さんには歯ぎしりや食いしばりをしているという自覚はなく、ご家族から指摘されるなどして初めて気づかれることが多いです。
さて、今回のケースに戻りますが、まずは噛み合わせのバランス調整を行い、過度なあたりをしている部分のやすり掛けをし、噛み合わせの負担を軽減させました。
しかし、噛み合わせの調整だけでは一度溶けた骨はなかなか戻らないことも多く、今回は再生療法を行いました。
再生療法とは、エムドゲインといわれる薬を塗布し、本来の骨の再生能力を発揮させ、失われた骨を再生させる方法の一つになります。
エムドゲインとは豚の歯胚組織から抽出したたんぱく質であり、これを塗布することで歯が出来上がるときと同じ環境を作り、再生を促します。
ただし、すべての場合で適応になるわけではなく、あくまで部分的な骨の吸収がある場合に行われる治療です。
治療後の様子
こちらは術後6か月後の画像になります。
痛みもなくなり、患者さんにも満足していただけました。
主な副作用・リスク
・全ての骨吸収に対し適応となるわけではありません。
・術後の予後を完全に保証するものではありません。
・術後、しみる症状や痛みなどが出る可能性があります。
・自由診療になる可能性があります。
定期的な通院と早めの治療を
歯科では肉眼で全てを確認できるわけではなく、骨の吸収はレントゲンやCTなどにより確認を行う必要があります。
今回のケースでも、他の歯科医院での経過観察を行っていたために、早めに治療に移行することができました。定期的な歯科医院への通院の重要性を改めて認識していただければと思います。
歯の骨が溶ける原因の多くは歯周病です。しかし、それとは別に食いしばりや歯ぎしりが原因でも歯の骨が溶けることがあります。このように、患者さんがなかなか気が付かないこと、知らないことなども歯科医師からしっかりと説明させていただいております。
せたがや歯科室では患者さんに安心して診療を受けていただくために、十分に説明を行い、メリット、デメリットを理解していただいたうえで治療を行っています。
当院では、CTやマイクロスコープなどの精密機器を使用することで、より正確な診断、治療を受けていただける環境が整っております。
治療についてお悩みの方、不明点などがある方も、どうぞお気軽にご相談ください。
せたがや歯科室 院長 吉竹 啓介
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